2001年夏、秋田県鷹巣町(2005年3月から北秋田市)は、認知症高齢者への虐待を根絶するための条例つくりにとりかかった。私は条例策定委員長をつとめた。 デンマークは、世界で一番進んだ認知症高齢者虐待防止法(社会サービス法の一部に組み込まれている)を制定して、2000年1月から施行していた。私と岩川町長と町の3人の担当者は、同年の9月から10月にかけて、デンマークに勉強にでかけた。 帰り道、私の提案で、ポーランドのアウシュヴィッツ絶滅収容所跡に立ち寄った。皆で『究極の虐待』を肌で感じ取って、条例作りの土台にしたいと思ったからだった。 私たちの作った条例は高齢者安心条例と名づけられて2002年4月から施行された。認知症高齢者の自由意志や自己決定を最大限尊重するための、施設職員学習マニュアルといった趣の法文だった。現場の職員たちがこれを遵守することによって、介護の技量や人権意識が進化するように仕組まれている、風変わりかつ画期的な条例だった。 しかし残念なことに、反岩川色の強い現市長は、2005年秋、この条例を葬ってしまった。 |
アウシュビッツ絶滅収容所1号のゲート | |
ゲートの上に『労働は自由への道』(実際には労働もガス室への一里塚だった) | |
悪名高き風景。 ビルケナウ(アウシュビッツ2号)の貨車引込み線 ヨーロッパ各地からここへ百万人以上が強制的に運ばれて殺された | |
ビルケナウのトイレ 朝、囚人たちは一列になってこの棟へ行進してきて数十秒で用を足す | |
ビルケナウの囚人用三段ベッド | |
アウシュビッツ1号に今も残る人間焼却炉 隣にガス室 |