1987年、神奈川県の老人病院を取材した。全入院者219人の4分の1近くが、夜間12時間も縛られていた。それとは別に26人が畳部屋に閉じ込められていた。これらの人々をも若干含むのだが、40人が抗精神病薬で行動を抑制されていた。(拙著『ルポ老人病棟』) 私はこの病院の実態を、病院名を伏せずに報道した。 病院名がはっきりしているのだから、家族は、自分の父や母がどんな目にあっているのか気付いたはずである。では、報道後、どれくらいの退院者が出たか。実は、ほとんど出なかった。 高齢者の尊厳とは全く無縁の、こうした収容ビジネスにも、それなりの存在理由はある。介護に疲れきった家族のための最終救済装置として、社会的機能をはたしているのである。 介護保険制度が出来て家庭介護の苦労が多少は軽減された。介護保険法の細則には虐待禁止もうたわれていて、介護保険制度傘下の介護施設では表立った虐待もしずらくなった。 しかし、介護の必要な高齢者、とりわけ認知症のお年よりの預けられる先は、介護保健制度傘下の介護施設だけではない。医療制度傘下の施設、つまり老人病院や精神病院や一般病院にも要介護高齢者はいっぱいいて、こちらでの縛ったり閉じとめたり等の虐待に対する歯止めは、今も無いに等しい。 2005年10月から、介護保険制度は本人や家族の負担が増える方向に改悪された。恐らく,家族はこれまで受けていたサービスのいくばくかを減らして、自らの介護労働を増やすことになるだろう。 介護に疲れた家族が増えれば、収容施設に捨てられる高齢者も増える。 日本の介護地獄は、完全解消には程遠い。 |
毎晩12時間、全身6ヶ所も紐で縛られる。219人の入院者の4分の1ほどがこんな目にあう。 超高感度フィルムで撮影し増感現像してやっと浮び上がった映像。(ルポ老人病棟) | |
廊下側の扉が施錠された北側の6人部屋。窓に鉄格子。ポータブル便器1つ。 院長は渋ちんで天井の蛍光灯も消してしまう。(『母をくくらないで下さい』) | |
精神病院の保護室4景↓ | |
精神病院 見ての通りの拘束 | |
左と同じ病室 拘束のための紐 | |
入居金約3000万円、月々の管理費30万円のお金持ち相手の有料老人ホーム。 夜は5分の1ほどのお年寄りが毎夜15時間も身体拘束されていた(ルポ有料老人ホーム) |