スウェーデン現代介護事情ポールヘムスゴーデン・スキャンダル(サーラ事件)概要舞台は、ストックホルム近郊のソルナ市で開設したばかりのシュークイェム『ポールヘムスゴーデン』だった。そこは介護の必要な高齢者のための施設で、日本でいえば特別養護老人ホームに相当する。ソルナ市が建物を建てて、運営をデンマークの掃除会社ISSの子会社ISSケアに委託した。 テレビ取材の発端は、「ポールヘムスゴーデンの介護はひどい」という通報だった。ジャーナリストとカメラマンは施設に乗り込んだ。若い介護職員サーラ・ヴェグナートがインタビューに応じた。 サーラさんは、職場の現実を正直に話した。 この放送がもとで、新聞記者たちが「ポールヘムスゴーデン」に殺到した。高齢者介護問題は、俄然、スウェーデン国民の大関心事になった。 ポールヘムスゴーデンは次のような問題点をはらんでいた。 ●開設直前に施設長が病気で辞めて、職員を指導し采配を振るうリーダーがいなかった。 ●入居者の介護コストとして、1人1日550クローネ(1KR13円として約7150円)で落札した。スウェーデンで痴呆性高齢者を預かる施設の介護コストの相場は1100〜1200KRと言われているから、極めて安く請け負ったことになる。 ●開設が1997年9月1日に開業したのだが、10日後には84床(室)を満杯にした。受け入れ態勢も整わないうちに、急激に要介護高齢者を詰め込んだのだ。 ●床ずれ防止用マットの購入も惜しんだ。身体の不自由な高齢者を持ち上げるリフトもなかった。 ●介護現場の各フロアーで、食事の一部を介護職員に作らせた。 ●職員たちはSOSを発したが、会社もソルナ市も「そのうちよくなるよ」というだけだった。 詳しくはPDFにて |
介護スキャンダルの舞台 『ポールヘムスゴーデン』 【スウェーデン調査チーム】 大熊 一夫 (当時 大阪大学大学院教授) 竹端 寛 (当時 大阪大学大学院生) 朝田 千恵 (当時 大阪大学大学院生) 中村千恵子 (当時 大阪大学大学院生) | |
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なお、この調査研究は三菱財団から研究費の援助を受けました。同財団に厚く御礼申し上げます。